実験例
pMOSインバータの製作
目的
MOSFETを負荷抵抗にもシリコンpMOSインバータをモノリシックに集積した集積回路(Integrated Circuit;IC)を製作し、 半導体加工技術を経験することを目的とする。
また、完成したインバータと、それを構成するMOSFETの動作特性を調べ、FETと論理回路に対する理解を深めることを目的とする。
(MOS:Metal-Oxide-Semiconductor;半導体の表面に酸化膜があって、その上に金属膜が付いている構造をいう。 シリコンMOSの場合、ゲート絶縁膜を酸化シリコンで作る。MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor;MOS形電界効果トランジスタ。)
インバータ
論理回路の基本は、単一入力の論理インバータ、または単にインバータ(inverter;反転器)と呼ばれるものである。
これは論理否定を出力する(NOT回路)。すなわち、もし2進の入力変数がAであらば、インバータの出力はNOT Aである。
負荷にMOSFETを用いたMOSインバータ回路の一つ例を図1に示す。
製造プロセス
製作に必要なプロセス技術
ICプロセスは大別すると、次の技術で構成されている。
- 基板結晶:n形、p形、抵抗率。
- 酸化:電気絶縁膜、選択拡散のパシベーション膜。
- エッチングと洗浄。
- 不純物拡散:PBF塗布、熱拡散。
- リソグラフィ:フォトレジスト塗布、アライメント、現像、はく離。
- 金属配線、実装。
それぞれの技術について、この実験で用いる方法の要点を述べる。
- 基板結晶:ρ~3.6Ωcm、リンドープn形(111)Siを用いる。 ウイハー直径10cm(~4インチ)φ、厚さ0.5mm。これを1cm×1cmの大きさに切断したものを実験に使用する。
- 酸化:選択拡散のパシベーション膜作成には水温60℃の純水中を通った加湿酸素の雰囲気の中で熱酸化を行う(ウエット酸化)。
ゲート酸化膜の作製には、乾燥酸素中の酸化を行う(ドライ酸化)。 - エッチングと洗浄:
ウイハ洗浄 リンス液「H2O:H2O2:NH4OH=8:5:1」 超音波洗浄各プロセス毎の洗浄に用いる。
バッファエッチング液 「35%NH4F(aq)=4:1」SiO2膜の除去に用いる。
10%HF液「48%HF:H2O=1:3.8」 ホウ素拡散後Si表面にボロシリケートガラス(Borosilicate Glass)が生じるので、 その除去に用いる。 - 不純物拡散:様々な方法があるが、有毒なガスを用いたくないので、ここでは東京応化製PBF(Ploy Boron Film)塗布法を用いる。
- リンルラフィ:フォトリングラフィ法を用いる。
- 金属配線:アルミニウム膜配線を用いる。アルミニュウムの真空蒸着→配線パターンプリント→エッチング(リン酸エッチング)→シンタリング。
アルミニウムシンタリングは、蒸着したアルミニウム膜に熱処理を施することによって、配線金属としての強度を持たせかつソース、ドレインとの オーム性電極を得るために行う。